前編で、Zoomの音質を上げるための方法を紹介しました。
音質を上げるために、アプリ側で設定を変更する方法と、音の入口(マイク)を変える方法があります。
内蔵マイクの音質はあまり良くないうえ、周辺の音を拾いやすいものも多いです。
そこで、オンライン会議の音声入力を外部マイクに変えると、音質を向上できます。
では、どういったマイクを選べばよいのでしょうか。手元にあるマイクで、Zoomの音質を比較してみました。
マイクの種類ごとの音質を比較
検証環境
- 録音方法:Zoomのローカルレコーディング機能を使って検証しています。ほぼ、Zoomでの配信音質に近いと思います。
- Zoomのオーディオ設定:マイクの比較検証がメインなので、すべて初期値です。
- 録音環境:洋間8畳
- PC:iMac 5K 27インチ(late 2015)
- 「設定」>「オーディオ」と選択し、「マイク」の項目で変更します。
- ミーティングの最中にマイクを変更するときは、ミーティング画面左下のマイクアイコンの横にある矢印をクリックし、使いたいマイクを選びます
iMacの内蔵マイク
Macには内蔵カメラと併せて内蔵マイクが標準で付いています。ほとんどは、この内蔵マイクを使う方が多いと思います。
iMac内蔵マイクのメリット
- そのまま使える
追加で機材を揃える必要がないので、今回の比較の中でコスパが最も高いです。
iMac内蔵マイクのデメリット
- 音質が悪い
- 口元からマイクが遠いので、音量が小さい
- 周りの雑音を拾いやすい
とりあえず配信は可能ですが、音質に関しては微妙なラインですね。
iMac内蔵マイクの音声(Zoomのアプリを通して録音)
AirPods
Apple製のワイヤレスイヤホン「AirPods(エアーポッズ)」。iPhoneのイヤホンとして使う方が多いと思いますが、Bluetoothのイヤホン&マイクとして使えます。
AirPodsのメリット
- ヘッドセット代わりに使える。口からの距離が一定なので、音質・音量ともに安定
- 無線イヤホンなので、コードがじゃまにならない
- サイズが小さいので、映像であまり目立たない
AirPodsのデメリット
- Bluetooth接続なので、若干の遅延がある
- 環境によっては接続が不安定になることも
小型軽量な上、コード類がないので、動きのあるレッスン向き。音質的には物足りないかも。
AirPodsの音声(Zoomのアプリを通して録音)
ピンマイク(ECM-PC60)
ボイスチャットや会議の録音用として定番の小型マイク「SONY ECM-PC60」です。付属のクリップを使うとピンマイクとして使えます。
ピンマイク(ECM-PC60)のメリット
- 比較的音質が良く、コスパに優れている
- 口との距離が一定なので、音質が安定
ピンマイク(ECM-PC60)のデメリット
- 付け方によっては、コードが服と擦れる音が入ってしまう
- Macの場合は、電源供給用のインターフェイスが必要
今回は、レコーダーのZoom H1nを間にかませてMacに接続しました。
小型軽量で使いやすく、ピンで固定できるので、声も安定します。もともと会議用途の製品なので、オンライン会議にも最適な選択だと思います。
コードがついているため、レッスンなど、話し手が動く場面での使用は難しいでしょう。
ECM-PC60 + H1nの音声(Zoomのアプリを通して録音)
ダイナミックマイク(SHURE SM58)
ダイナミックマイクは、ボーカル・ナレーションによく使われるマイクです。会議・講義で使うと、かなりの音質向上が期待できます。
私が使っているダイナミックマイクは、「SHURE SM58 」。
「ゴッパチ」、「ゴッパー」の愛称で親しまれている、ライブのステージで定番のマイクです。YouTube配信用に入手したものですが、オンライン会議でも活躍してくれています。
ダイナミックマイクのメリット
- 話し手の声だけを綺麗に拾ってくれる
ステージ上で他の楽器の音を拾わないように作られているので、周りの雑音や部屋の反響音が入りません。 - 頑丈で耐久性が高い
ライブ用に作られているので、次に紹介するコンデンサーマイクと違い、丈夫で衝撃にも強いのが特徴です。
ダイナミックマイクのデメリット
- 追加で接続機器を揃える必要がある
ダイナミックマイクは直接Macにつなげられません。オーディオインターフェースのマイク端子につなぎ、そこからUSB経由で音をMacに送ります(私の使っているオーディオインターフェイスは Steinberg UR22mkII です)。
ダイナミックマイクは、使い勝手が良く、音声も綺麗ですので、オンライン会議でも重宝します。
ただし、映っている姿は、まるでニューススタジオ。
他の会議参加者からの目が気になりますね…
SHURE SM58の音声(Zoomのアプリを通して録音)
コンデンサーマイク(AT2020)
コンデンサーマイクは、スタジオでボーカルやナレーションの録音に使われるマイクです。
私が使っているコンデンサーマイクは、「audio-technica AT2020」。YouTube配信用として人気のマイクです。
コンデンサーマイクのメリット
- 音を拾う感度が良い
ダイナミックマイクよりも高音質です。
コンデンサーマイクのデメリット
- 感度が高過ぎる
音に対する感度がとても高いため、エアコンやストーブの音、部屋の反響音、外の車の音まで拾ってしまいます。録音スタジオなど、静かな環境で使うためのマイクですので、周りに音があるところでは使いにくいです。 - 取り扱いに注意が必要
ダイナミックマイクと違って、振動や湿度に弱く、取り扱いと保存には注意が必要です。 - 追加で接続機器を揃える必要がある
ダイナミックマイク同様、単体ではMacと繋げないので、別途オーディオインターフェースを用意する必要があります。また、コンデンサーマイクの場合は、ファンタム電源対応のものを選ぶ必要あります。
私の使っているオーディオインターフェイスは、ファンタム電源のついた Steinberg UR22mkII です。
YouTube配信の際、ダイナミックマイクの音質に物足りなさを感じて購入したコンデンサーマイクですが、部屋の反響音を拾いすぎてしまい、オンライン会議向きではないなと感じました。
今回紹介したマイクの中では一番の音質です。音響に気を使ったうえで、配信用の動画をしっかり作り込むときには重宝します。
AT2020の音声(Zoomのアプリを通して録音)
スマートフォン(iPhone)
実際のZoomのミーティングでは、スマートフォンで参加される方が多い印象です。スマートフォンの場合は、純正のアプリを利用してミーティングに参加します。
スマートフォンのメリット
- 手軽にオンライン会議に参加できる
iPhoneと通信環境があれば、どこでも気軽にオンライン会議やセミナーが配信できます。 - インカメラの画質が比較的良い
PCの内蔵カメラと比較して画質が良いです。スマートフォンはそもそも通信端末なので、各メーカーがインカメラの画質向上に力を入れています。
スマートフォンのデメリット
- 音質はそこまで良くない
スマートフォンが普及し始めた時期に比べ、内蔵マイクの音質も上がってきましたが、筐体が小さく、そこまで高音質なマイクは内蔵されていません。
iPhone XSの音声(Zoomのアプリを通して録音)
【応用】iPhone+ダイナミックマイク
オーディオインターフェースには、iPhoneとUSBでつなげるものもあります。ダイナミックマイクとiPhoneで配信も可能です。
カメラ性能はMacよりも上なので、ネット環境さえ整っていれば、こちらの方法も良いかもしれません。マイクやオーディオインターフェースを持ち歩く必要はありますが、出先での配信も可能になります(Wi-Fi環境を推奨します)
私の使っているオーディオインターフェイス、Steinberg UR22mkII はiPhoneにつなげて使えます(iPhoneとUSB接続をするため、 Lightning USBカメラアダプタ が必要)。
また、スマートフォンと接続して使う場合は、給電のためにUSBモバイルバッテリーが必要です。(写真のバッテリーは、大容量の Anker PowerCore Essential 20000 PD )
周辺機器の追加が必要になりますが、モバイル環境でもネット配信の音質を上げられます。
iPhone XS + SHURE SM58の音声(Zoomのアプリを通して録音)
結論:オンラインミーティングの音質向上には、ダイナミックマイクがおすすめ
個人的な感想としては、オンライン会議やセミナーで綺麗な音声を配信するには、ダイナミックマイクが最適です。
音質的にはコンデンサーマイクが一番なんですが、このマイクは本来、音響スタジオなど、外からの音や反響の対策が施された環境で真価を発揮するマイクです。
そういった意味では、周囲の雑音を拾いにくいダイナミックマイクの方が、Zoomで使うマイクとしては最適だと感じました。
もちろん、それぞれ好みもあるかと思います。実際に自分の使っているマイクを使い、Zoomでどのように聞こえるか、確かめてみてはどうでしょうか。(Zoom配信中の音をモニタリングする方法は、前編に掲載しています。)
- Zoomは、オンライン会議に使うマイクを変更できる。
- 音質を向上すると、自分の声を明瞭かつ確実に相手に届けることができる。
- 音楽をしている人、YouTube配信をしている人は、手持ち機材をオンライン会議に活用できる。
今後、オンラインでのコミュニケーションの機会がさらに増えていくと思います。おさらいのため、Zoomの基本的な使い方を別記事にまとめてみました。
ホスト(主催者)になったときに便利な使い方をまとめた記事もあります。